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開発のきっかけ

開発のきっかけ、発売開始からの1年、これからのこと

ピンクと白のハート型の将棋!!その衝撃の登場から1年、【ハート将棋】は、メディアにも多く取り上げられ、将棋のプロにも認めていただきました。

そんな【ハート将棋】の開発者である、ハート将棋CLUB 代表の岩林明美が、【ハート将棋】についてはじめて語ります。

 

(インタビュアー:宇佐木野生「ハート将棋物語」作者、インタビュー時期:2018年10月)

−ハート型将棋【ハート将棋】登場から1年、このインパクト溢れる将棋誕生のきっかけはなんだったのでしょう。

 

岩林:藤井聡太七段のブームがきっかけだったことは確かです。私自身、それまでは将棋への関心も経験もまったくなかったのですが、将棋はまずゲームとしてもとても面白そうだし、「先を読む力」とか「論理的な考え方」の訓練にもなってすごくいいなと思ったんです。これはもっともっと子どもたちに広まったらいいなと。特に女の子にね。だって将棋って女の子にはどうにも遠い存在じゃないですか。

 

−将棋は「女の子には遠い存在」なんですね?

 

岩林:私は三人姉妹ですが、姉妹のうち誰も父から将棋を教えてもらったり、一緒に遊んだりした経験はありません。時代のせいかもしれませんけどね。でも、その父が、4人いる孫の男の子には将棋を教えて楽しんでいるんですよ。おそらくそれにははっきりとした理由があるわけではなく、「将棋は男の子の遊び」っていう固定観念がずっとあったんだろうと思います。

ロジカルなものの考え方や先を読むことが得意な女の子だってたくさんいるのに、女の子は将棋を通じてその力を伸ばす機会になかなか接してこられなかった。それはとても残念なことです。私自身、子どもの頃に父が将棋を教えてくれてたら、今の自分はもう少し違ってたかもなあ、なんて思ったりもします(笑)。

 

−女の子が将棋に親しむことで伸ばせる力があるのですね?

 

岩林:はい。たとえば、「先の展開をイメージして今の行動を決める」とか、「全体を俯瞰的に見る」というようなことって、社会に出るとすごく必要な力ですけど、学校の教科書で学べるものではないですよね。一方、将棋をやることで、「相手の出方をみてこちらの進む方向を決める」とか、「前ばかりでなく後ろや斜めに動くことを考える」とか、様々なシーンを体験できるんです。将棋に触れることで、そうした力を身につけていけるような気がします。

あと、将棋は単なるゲームではなくて、人間を相手にするコミュニケーションツールなんですね。たとえば、「相手の気持ちを読む」、「次の動きを見定める」など、将棋は無言のコミュニケーションの上に成り立ってますよね。さらには、人が集まって盤上の勝負を眺めている…将棋には「集まる」っていうイメージがありませんか?女の子たちにはそんなコミュニケーションの場が得意な子も多いんじゃないかしら。

 

−それで、女の子に手に取ってもらえる将棋を作ろうと思われたのですね。

 

岩林:はい、そうなんです。女の子が将棋で普通に遊ぶようになったら、絶対に面白いことになるに違いないと思ったんです。ですが、弊社のスタッフに「女の子のための将棋を作ろう!」と初めて話した時、みんな「ショーギ?またどうして??」と戸惑っていました(笑)。誰も将棋の経験者がいなかったんです。

でも、だからこそ、「じゃあ女の子が遊びたい!って思う将棋ってどんなものだろう?」というところから考えはじめることができたんです。そこで「小さい女の子をもつ周囲のママに話を聞こう」と、たくさんの方から意見を伺いました。その結果、女の子向けの将棋を、お子さんに一番近いママの視点で作り上げることができたと思います。

 

−将棋ブームを追い風に多くの将棋製品が発売される中、【ハート将棋】はどのような位置付けなのでしょうか?

 

岩林:そうですね、いろいろな将棋製品が販売されていますけれど、女の子の目にとまるようなかわいいものがなかったんですよね。かわいらしいと言っても単純でチープなものでなく、おしゃれかつきちんとした将棋を作りたかったんです。「おしゃれで、木製で、きちんとした将棋」がそのときのキーワードでした。

この「きちんとした将棋」というのは、他社製品の中には子ども用に特化して、将棋風ではあるけれど別ルールのゲームにしているものなどもありますが、今回私たちが作るものは、女の子向けのデザインにはするけれど「正しい将棋のルールに則った将棋セット」にしよう、ということです。

そんなふうに思っていた時に、ひらめきがありました。「お家のカタチの積み木」という可愛い木製玩具があります。こんなふうにインテリアにもなるような、おしゃれでウッディで丁寧に作られたイメージがいいなと思って、早速、製造元の(株)Kukkiaさん(以下Kukkiaさん)にお話を持ち込んでみました。Kukkiaさんは、「おしゃれで楽しい安全な木のおもちゃ」に定評があるのです。そうしたら、とても関心を示してくださって、トントン拍子に話が進んだんです。

 

−ハートとピンクが登場したのはどうしてですか?

 

岩林:小さい女の子がいる周囲のママにヒアリングを重ねた結果、女の子はやはりピンクとハートが大好きということが分かったんです。最近は水色も人気のようですけど、ここはインパクト重視でピンクと白にしようと。それで「ハートとピンク」という方針が決まりました。

 

−駒をハート型にすることで工夫されたことはなにかありましたか?

 

岩林:そうですね、ハート型の駒は、小さな子どもの手に馴染む重さ、大きさにすることにこだわりました。握るのにも掴むのにも都合のいい厚みになっていて、無理なく駒を立てられるので、木のおもちゃのように積み木やドミノとして親しむこともできるんですよ。しかも、女の子に人気のハート型は、それぞれの駒の名前と進み方とを同時に書き込むのに適した形でもあるんです。

 

−すごいですね!手触りはもちろんですが、木製の駒と将棋盤の奏でるパチンという音も素敵だなあと思います。

 

岩林:ありがとうございます。木製にすることで、あのあたたかみのあるパチンという音が表現できました。あと将棋盤についてですが、当初私は折りたたみ式にすることを考えていたんですけど、結局それはやめました。折りたたみにすると「小さな子どもが手を挟んでしまう恐れがある」という意見があったのと、軽くてコンパクトにして持ち運びしやすくしたかったので、将棋盤は2枚の板を並べるというシンプルな形状にしました。

 

−【ハート将棋】はそうした思いや心づかいを込めて、工夫を凝らして作られているのですね。ところで一般的な将棋セットに慣れている方々の反応はいかがでしたか?

 

岩林:実は、「ハート型・ピンクと白」という点には、昔から将棋をご存知の方ほど抵抗を感じられたようで、苦言を呈されたこともありました。「ブームに乗って話題性目当てに作った」という印象があったのでしょう。
ですが、この形と色は、「将棋に親しんでもらう間口を広めるための手段にすぎない」ということを重ねてご説明しています。小さな子どもや女性にまず、気軽に将棋に触れてもらい体験してもらうためのツールなのだと。

私たちには、従来の将棋を否定したり、将棋界に意見をしたりするつもりは一切ありません。むしろ「将棋をもっともっと広めて行きたい」、「将棋に触れたことがある人たちを増やして行きたい」、という気持ちは、もともと将棋の世界にいらっしゃる方々と同じなんです。

 

−具体的にはどのようなご意見があったのですか?

 

岩林:特に、ピンクと白の二色になっていることについては「邪道だ!」と言われることがあります(笑)。一般的な将棋の駒はすべて同じ色ですからね。「邪道」とおっしゃる理由は、「勝敗の状況の区別がつきにくい」、「持ち駒として相手の駒の色を使うので盤面が見づらくなる」というのが主なものです。この点については、ハート将棋は、相手の駒と自分の駒を色分けして分かりやすくして、将棋初心者に相手の駒を取っていく動きをビジュアルで感じてもらうことで、勝負心をかき立てる効果を狙っているのです。

 

−ハート型に対するご意見もあったそうですね。

 

岩林:ハート型にしたことが、一番ミーハー的に見られたと思います(笑)。でも、従来のような将棋に対する近寄り難いイメージをくつがえすには最大の効果がありました。

駒の形もですが、大きさが均一なのもご批判をいただくところです。ただこれも、ハート将棋はあくまでも将棋への入り口であって、まずは動きや勝負のおもしろさを知ってもらいたい。それから本格的な将棋セットに進んでもらえばいいと思っています。

 

−新しいバージョンが発売されるそうですね?

 

岩林:はい。2018年12月に発売(11月予約販売開始)されるハート将棋の新バージョンでは、女性のプロ棋士の団体であるLPSA(公益社団法人日本女子プロ将棋協会)の監修を受けることができました。

もちろん、もともと「きちんとした将棋」を作ったつもりでしたから、LPSAからは「2017年発売バージョンでも将棋セットとして問題はない」との太鼓判をいただいたのですが、新バージョンでは、「桂馬」と「香車」の裏面の表記が分かりづらかったとのご指摘があり、これを改定しました。

将棋の専門家のご意見をきっちりと取り入れましたので、より安心してお子さんに遊んでいただけると思っています。

 

今回の新バージョンには、将棋のルールや用語の説明、Q&Aなどについて分かりやすくまとめた「あそびかたBOOK」も付いています。低学年の子どもとママが一緒に読めるように、ルビをふっていますし、とてもかわいらしい装丁なので、手にとっていただきやすいと思います。

また、将棋教室や児童館の先生方からのアドバイスもあり、駒のスペアをピンクと白、二つずつ付けています。ハート将棋の駒は他で代わりのものを見つけることができないので、駒を失くしてしまった場合の対応が必要、とのご意見を複数の方から頂戴していたんです。

このように、新しいハート将棋は、将棋専門家やさまざまなステークホルダーの皆様のご意見を取り入れております。ハート将棋が、皆様のお力添えのもと、よりよいものに成長していくことをとてもうれしく思っています。

 

−【ハート将棋】のイベントが増えているとか?

 

岩林:そうなんです。ハート将棋の商品特性から、将棋がはじめてのお子さん向けの将棋イベントが多いですね。一般的にこれまでの将棋イベントは、将棋に慣れた子どもたちが「将棋を指す」機会はあっても、未経験の子が「将棋を始めてみる」タイプのイベントはあまりありませんでした。ハート将棋は駒に進み方が書いてあるので、ルールが分からなくても「その場でちょっとやってみる」ことができるんです。

 

−【ハート将棋】のイベントには、親子向けのものも多いそうですね。

 

岩林:はい。家族連れをターゲットとした各種施設でのイベントがとても増えています。これは私たちも大歓迎なんです。なぜなら、女の子と将棋の距離を近づけるためには、まず「将棋なんてやったことない」というママ達に将棋を知ってもらうのが一つの方法と考えているからです。ハート将棋のかわいらしさ、分かりやすさを見ていただき、触っていただいて、「これなら私にもできそう」と、お母さん方にも思ってほしいと思います。「将棋をやらせたいけど私が教えられないから」っていうお母さんって多いんですよね。イベントで体験すれば、一緒に親子で始めようというきっかけになるので、ぜひ親子で母娘で、ハート将棋に触れてほしいです。

 

−【ハート将棋】は、女の子以外、たとえば男の子や大人にはどのように受け止められていますか?

 

岩林:今の男の子たちって、ピンクにもハートにも特に抵抗感はないみたいですよ。イベントには男の子も普通に参加してくれます。ハート将棋が、みんなが集まって楽しめるコミュニケーションの道具になってくれたらうれしいですね。

若い世代の女性にも紹介していって、ハート将棋に触る、やってみる機会がもっと作れたらなあ、とも思っているんです。そしたら、彼女達がやがてお母さんになった時にはもはや「女の子に将棋!?」なんて言わなくなりますよね。「ああ、昔ちょっとやったことあるけど、そんなに難しくなかったわ」という感じで気軽にお子さんと将棋を楽しんでもらえるようになるんじゃないかな。
また、親子だけでなく、夫婦のコミュニケーションの道具としても楽しんでいただけているようですよ。

また大人の脳トレとしてもハート将棋を活用できますよ。私自身、脳トレになると思って、同世代の女友達と一緒に将棋教室や将棋barに通うようになりました。その教室やbarでも、初心者を中心にハート将棋は「気軽に楽しく遊べて、頭も使うし、いいわ〜これ」と大好評なんです。

 

−大人も楽しめるんですね。

 

岩林:カフェでの婚活パーティにハート将棋を持ち込んでみたんです。そしたらね、お互いの性格がよく分かるんですよ!意外と戦略的だとか、大胆だとかね(笑)その上、あまり話上手でない男性が、女性に将棋を教えることで自分の優しさや賢さを見せるチャンスになったりもする。女性の側も、かわいいだけじゃない魅力にも気づいてもらえる。このように、なかなか普通の婚活パーティにはない効果があったみたいですよ。

 

−それ以外にどんな広がりをお考えですか?

 

岩林:冒頭で私の父の話をしましたけど、ハート将棋は、お父さんやおじいちゃんがかわいい娘や孫娘と上手くコミュニケーションをとるためのツールには最適なんじゃないでしょうか。

それから、今、老人福祉施設や児童施設などでハート将棋を活かせないか検討していただいているんですよ。将棋が得意なおじいちゃんがおばあちゃんに遊び方を教える場面はよくあるでしょうし、おばあちゃん世代は子どもの頃に「回り将棋」や「はさみ将棋」の経験のある方が多いでしょうから、おばあちゃん同士で遊んだり。そのようなコミュニケーションのツールとしてはもちろんなんですけど、理学療法士さんによれば駒をつまみ上げるとか、立てるとか、並べるとか、そういう作業が手先を動かすトレーニングにもなるんですって。

 

−【ハート将棋】のこれからについて、思いをお聞かせください。

 

岩林:とにかく、知育にもコミュニケーションツールとしても役立つ「将棋」の魅力を多くの方に知っていただきたいんです。そのための入り口としてハート将棋がある。ハート将棋を多くの人に、まず触ってもらい、遊んでもらいたいと思います。ハート将棋は、将棋という日本文化を次世代につなげて行くことと、未来を生きるための能力を開花させることの両方を可能にする入り口のツールなのです。
また、女性らしい感性を活かした将棋の普及活動を進めるLPSAとは今後、家族連れや子ども向けイベントの開催など、共同事業を増やしていきたいと思っています。かたや将棋のプロの世界、かたやビジネスの世界に身を置いていますが、同じ女性同士、女の子や女性にもっと将棋を普及させていきたいという志は同じです。そして将棋を広めるムーブメントを、日本国内だけでなく広く海外にも伝播させたいのです。そんなハート将棋の大きな可能性にぜひご期待いただければと思います。

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