「ねえ、孫がね、こういうのくれたのよ。今日は皆さんでどうかしらと思って」
松下さんが水色の可愛らしい袋からピンク色の板を取り出しました。もう一つ麻の小袋ようなものを開けて逆さにすると…あらあら、たくさんのハートが転がり出てきた!ピンクのと白のと。
「あら可愛い!これ何?」
佐々木さんが一つ摘んで裏表をじっくり眺めています。
「なんか、書いてあるじゃないのよ。えーと…歩く、じゃなくて歩!?飛車もある。これひょっとして将棋なの??」
とても驚きました。こんなに可愛らしい形をしていて、ピンクと白で。あら、そういえばこの板は二つ合わせたら縦横9マスずつの将棋盤になるんですね。
「ハート将棋っていうのよ」
あらあら、将棋なんて何年振りに出会うのかしら。父は割とやっていたけれど、夫も息子たちもほとんどやらなかったし。
「ハートハイム旭町」に住み始めてもう40年以上になりますね。新築の時に主人が抽選会に並んでね、やっと買えたんです。この会はね、毎週木曜日の2時から4時半までやっています。そうですねえ、もう30年くらいも前になるかしら?マンションでの生活は、子どもが小さいうちは多少おつきあいがあっても、だんだんと大きくなるとその機会が本当に減ってしまうことを嘆いた方がいらしてね。懇親のためのサークル活動を始めたらどうかってマンション理事会に提案されたんですよ。その提案をなさった方が、折り紙細工がお得意で、まずは折り紙の会をやりましょうってことになって。そしたら、私は書道を教えます、とか、編み物をやります、とかおっしゃる方が現れましてね。普段お家にいる主婦の方が中心でしたけど。そうそう、それからずーっとなんですよ。毎週木曜日2時から集会室で。
そうなの。編み物の会と書道の会と折り紙の会を一緒にやるんですよ。昔はね、曜日を分けていたんですけど、だんだんみんな歳をとってきたし、新しく入ってくる方もほとんどいないのでね。集まって、なんとなくその日にやりたいことをやります。編み物か書道か折り紙か。まあ実質は1時間くらいかしらね。あとはまあ、お茶をいただいておしゃべりしちゃうんですけれど。ああ、何年か前にはね、実際にはサークル活動なんかロクにしてなくて、ただの年寄りのお茶飲み会じゃないか、ってマンションの理事会で問題になったことがありましてね。それで、一つ増やしたんです。「お茶とおしゃべりを楽しむ会」っていうサークル。それもサークル活動だからいいっていうことになったんですって。なんだか、変ですけど、続けられて良かったなあって。
そんなわけで、今はお年寄りが毎週集まってはお互いの健康状態とか、家族のこととかを話すいい機会になっているんです。15,6年くらい前からは、会社を退職した男性もちらほら仲間入りするようにもなってね。私はあまり外にお友達がいないので、ここは楽しいですよ。
その可愛い将棋はね、リハビリ施設にお勤めしている松下さんのお孫さんが持ってこられたのですって。
「女の子にも将棋を楽しんでもらおうっていう趣旨で作られた商品なんだけど、お年寄りのリハビリにもいいんじゃないかと思うから、おばあちゃん試しにお友達と使ってみて、って置いてったの」
松下さんは、少し前まで民生委員もやっていたようなしっかり者の方です。お孫さんもリハビリ施設にいらっしゃるなんて、人に優しいご一家なのだなあと思います。
「へえ、これが将棋ねえ。私、実は強いのよ。近所の男の子たちで私に勝てるヤツはいなかったもの」
佐々木さんはハートの駒どうしを軽く合わせてカチカチと音を立てました。
佐々木さんは海外と貿易をする会社に定年まで働いていらしたのだそうで、とてもお洒落で、いろいろなことをご存知です。お酒もお強いと聞いています。
「おいおい、将棋ばかりじゃないだろう、佐々木さんには何だって勝てる男なんかいねーよ」
ビルなどの大きな建設工事をやってきたとおっしゃる小野さんは、少し言葉が荒いですが優しい男性です。大柄な体に似合わず、と言ったら失礼ですけれど、小野さんの作る折り紙細工の繊細なことといったら!細かくて緻密な作業がお得意なんですね、と先日申しましたら、いやあ、最近は目がどうもねえ、あのなんとかいうメガネ買うかなあって笑っておられましたけど。
「はいはい、いつもそう言って男は私を相手にしないで逃げてたわよ」
「あはは、昭和の男は本当にバカだから佐々木さんの魅力に気づかなかったんでしょう、すんませんね、代表して謝ります」
なんだか、若い頃から憎まれ口をたたき合って育ってきたかのようでしょう?でも、ほんの何年か前までは、お互いがスーツを着て、玄関ホールで会ったら、軽く会釈をして挨拶をするくらいの名前も知らない単なる住人同士だったんだと思いますよ。同世代で集まるって、こういう風にすぐ仲良くなれるってことなんでしょうねえ。老人会、なんてバカにされがちですけど、なかなかいいな、と思っています。
「孫はね、本気で施設に導入するために感想を聞きたいらしくて」
松下さんは集会室のテーブルにポンポンといくつか水色のカバンを並べていきました。
「おばあちゃん、お茶会だかなんだかやってるじゃない。そのとき皆さんにやってもらってよって4セットも持ってきたの」
「お茶会じゃなくて折り紙と書道と編み物の会だけどね」
誰かがつぶやきました。実際には自分たちももうすっかり、「木曜日のお茶会」って呼んじゃってるんですけどね。一応、こういうことは時々確認しなくちゃねってみんなで笑うんです。
「じゃあ今日は、折り紙と書道と編み物とハート将棋の会ってことで」
松下さんがそういうと、それぞれがなんとなく4カ所に置かれたハート将棋の近くに座って、袋を開け、各々ハート型の駒を見て歓声をあげました。折り紙も書道も編み物も始める人はどなたもいないようで、この日は本当にハート将棋の会になりました。
「将棋の動かし方が描いてあるでしょう?金の字の周りに矢印が出てるじゃない、それよ。だから、駒の動き忘れちゃったなあっていう人にもすぐできるの。あとねえ、孫にいろいろ他の遊び方も教わったから」
「他の遊び方ですか?」
私はこの可愛いハート将棋で遊んでみたくて仕方なかったのだけれど、将棋は小さい頃に兄と挾み将棋をしたくらいの経験しかなかったから、他の遊び方があると聞いて思わず飛びつきました。
「そうなの、なんかねえ、かっこいい名前がついてるでしょう。ハートサンドゲーム、ハートアップゲーム、ハートジャンプゲーム…孫にみんな教えてもらったわよ。どれからやりたい?」
私たちが聞きなれないゲームの名前に驚いている事、小野さんともう大山さんという男性はもう早速、本将棋を始めたようでした。
「さてさて、松下さんのお孫さんの実験台になってあげるとしますか。ハートでもなんでも将棋は将棋だろう。なんだかこの形と色はムズムズするかな。あ、でも、子どもには持ちやすいのか。おお、割とちゃんといい音出すねえ」
「ピンクのハートで遊ぶってのは、私らの世代にはちょっと気恥ずかしいですけどね」
「ジジイ二人でこんなので将棋指すなんてな。でもまあ、それが令和の年寄りってことで」
父や近所のおじさんたちが将棋を指す風景が昔は珍しくなかったですが、最近では本当に目にしません。でも、男性のこんな風に和んでいる姿はやはりいいものだな、と思えました。
ハートサンドゲームがいい、と最初に言ったのは私だったような気がします。そしたら、佐々木さんも「アタシもやりたい」と言いました。
「あら、佐々木さんは本将棋じゃなくていいの?あっちで男性陣が始めてるみたいだけど…」松下さんがあらためて確認しましたが、
「いいのよ。新しいゲーム、カタカナの名前ってのが興味あるじゃない」
と佐々木さんは言いました。
「そう、じゃあ、ハートサンドゲーム説明するわね。ピンクの歩の駒9枚と白の歩の駒9枚をそれぞれ両はしに並べます。縦横何マスでも動かせます。斜めと飛び越えはダメ。相手の駒をサンドしたらそれを取れます。相手の駒を2コマにしたら勝ち、です。そんなに難しくないわよね」
へえ、簡単で面白そうだと思いました。私でもできるかもしれません。
ジャンケンをしたら私が勝ちました。それで先手をもらって。私はピンクの駒を動かします。何マス動かしてもいいんでしたよね、じゃ、まず右端のこれをおそるおそる前に2マス。佐々木さんが左側から二番目の駒をこちらに3マスほど進めてきて、うーんどうしようかしら、じゃあ、今度は左端を、そしたら佐々木さんは先ほどの駒を2マス下げて…えーと、これをサンドするには…その辺りでやっと気づきました。あらあら、これってはさみ将棋じゃない!?ああ、そうか。ハート「サンド」ゲーム!なるほどね。
ハートサンドゲームがはさみ将棋だと気付いてからは、私、ちょっと元気になってしまいました。将棋はあまり知らないと申しましたけれど、実は、はさみ将棋は兄とよくやっていて。私はいつもひどい負け方をしていたことを思い出しました。これは私にとっては初めてやるゲームではなかったんです。
そして、実ははさみ将棋にはコツというか、負けない秘策があることも知っていました。何回やってもどうにも勝てないのが嫌になって大泣きをして兄を困らせたことがありましたが、その時に渋々教えてくれたのです。
佐々木さんは多分、はさみ将棋はあまりやったことがなかったようにお見受けします。もしかすると、近所の子が誰もわたしに勝てなかったというのは、お得意のジョークだったのかもしれません。本将棋が強くてはさみ将棋ができないなんて人はいないように思いますから。
案外簡単にわたしが勝ち、しかもそれが4回も続いてしまいました。佐々木さんの顔色を見ながら、あれ、ちょっと困ったな、どうしよう、と少し思っていましたら、佐々木さんが少しばかり大きな声で言いました。
「じゃあ、次、つぎ!あと他のゲームは?ハートなんだっけ?もうちょっと簡単なのがいいわよ」
ほかの皆さんのゲームを覗いていた松下さんが戻ってきて言いました。
「ハートジャンプゲームはどう?こっちはもう少し簡単かも」
「あ、いいわねえ、ジャンプ!それ行きましょう」
今度は9つの駒を3つずつの正方形に並べて、相手の駒を一つ飛ばしにジャンプしながら、9つ全部を相手方にならべかえるというゲームでした。
「あら、これはカエル将棋じゃない!知ってるわよ」
「ああ、そう?飛び将棋ともいうらしいわね。だからハートジャンプゲーム」
「ジャンプジャンプ!強いわよ、私!」
今度は本当にお強かったです、佐々木さん。わたしは今ひとつ、どのコマがジャンプできるのかを飲み込むのが遅くて途方に暮れているうちに、佐々木さんの白いハートがわたしの側に9つ整列していました。
「もう一回いこう!ジャンプジャンプ」
佐々木さんはハートジャンプゲーム、気に入られた様子でした。わからないままで終わってしまうのは少々、残念に思いましたので、再戦する事にしました。ピンクのハートを9個正方形に並べ直します。佐々木さんの白いハートが繋がって並んでいるところも飛び越えていいという事に気がつきましたので、今回はちょっとそれなりに戦えた気がします。それでもやはり、負けてしまいました。
「ああ、いいねえ、もう一回ハートジャンプやろう」
結局、私は1勝5敗で、もう少しで2勝目を上げられるというような展開のところに、ハート将棋を使っての本将棋で一戦を終えたらしい小野さんが覗きにきました。
「あれ、飛び将棋なんかやってんのか、佐々木さん」
「ハートジャンプゲーム、とおっしゃっていただきたいわ」
ちょっと気取った調子で佐々木さんが言います。
「本将棋をやれよ、近所で負けた事なかったんだろうによ」
「ああ、付き合ってくださってるんですよ、私に。将棋がわからないのだけどハート将棋で遊んでみたかったので」
私は慌てて話を軌道修正しようとしていました。はさみ将棋と飛び将棋の戦いでしたけれども、佐々木さんは、実は将棋をやった経験はそれほどなさそうだなあと、薄々感じていましたから。
「そうよ、新しいゲームがいいかなと思ってね」
「じゃあ、次は俺が相手になるよ、本将棋しよう」
佐々木さんの顔色が少し変わった事に気づいたのは私だけではなかったようでした。松下さんがすかさず提案してくれました。
「オススメなのがあるのよ。ハートアップゲームで対戦してみたらどうかしら」
普通の将棋の駒と同様、ハート将棋のコマも縦に立ちます。ハート形でどうやってと思いがちでしょうけれど、厚みがあるのと、ハート方の上の二つのふくらみ部分が割としっかりとした土台になって、きちんと立っていてくれるのです。私たちの隣のテーブルでは、ハートをたくさん並べてドミノだおしのような遊びを楽しむ人たちもいました。
ハートアップゲームとはハートを高く積み上げていくゲームのことでした。ハート将棋の駒を立てて、その上にまた駒を載せていきます。ハートの尖った部分が、凹んだ部分に刺さるような形にして積んでいくのです。
「時間内に何個積めるか、でもいいし、高さを競ってもいいんだけど。どうする?手先の器用さの勝負になるかな」
松下さんが付け加えた「手先の器用さの勝負」という言葉が小野さんの心を動かしたようでした。
「お、それはちょっとやってみてえなあ。どんだけ高く積めるかの競争がいいや。ほら、佐々木さん、やろうぜ」
「いいわね、やりましょう!」
「20枚じゃたりねえかもなあ、他のところのハート将棋セットも借りてこねえと」
それぞれの目の前に将棋盤を半分づつ置いて、佐々木さんはピンク、小野さんは白いハートを積んでいきます。まず一個を立てる、これはそれほど難しい作業ではありません。二つのハートが可愛らしく置かれました。
それにもう一つを重ねることが最初の一歩です。意外にもこの段階で、二人ともが苦戦しました。ハートの凹みに尖った部分がうまくフィットしないと、どうにもぐらついてしまうのです。ですが、佐々木さんの方が先に、まず二個目を積み上げました。
「ほら、できた。どおよ」
「どうよって、まだ一個だろが」
小野さんの大きな手の太い指がハートをつまみ上げているのが、何か不思議な光景に思えましたが、ゆっくりと慎重に白いハートを乗せました。
「ほれ、こんなもんだ」
コツを掴んだのか3個目は小野さんがすぐに乗せました。それを見て、佐々木さんも負けじとピンクのハートの駒を手に取りましたが、少し手で触って何かを感じたのか、別のハートに交換しました。駒の接触面によって影響が出ることがあるのでしょうかねえ。こういう時は自分の感覚だけが頼りですものね。
これ、と決まった様子で佐々木さんは3個目のハートを乗せました。
小野さんの方は白い歩・歩・歩、佐々木さんはピンクの歩・銀・飛車が縦に並びました。
「どんどん積み上がるのかと思ってたら、案外時間がかかるわね。20枚じゃ足りねえ、誰かは言ったけど」佐々木さんがつぶやきます。
小野さんは集中しているようすで黙って4段目に取り掛かっています。立っている3つの駒に、顔を近づけたり遠ざけたりしながら真上の駒の角度を見たり、自分の持っている駒をあらゆる面から見回して何かを確認しているようでした。4個目の白い歩を載せると小野さんが言いました。
「さあ、佐々木さん、あんたの番だよ。ぺちゃぺちゃ喋ってないで、早くやんなよ」
「うるさいわね」
佐々木さんはちょっと慌てたのか、手に持っていたピンクのハートが、3つ重なった山に少し触れてしまったようでした。一瞬揺れましたが、なんとか平衡を保って立っています。
「んもう、びっくりした」
と呟くと、佐々木さんはハートの香車をもう一度じっくりと見直して、今度はそれを裏返して4つ目を乗せました。
この頃になると、他のテーブルでハート将棋のゲームに興じていた人たちもちらほらと二人の対戦を見にきていました。白4個、ピンク4個のハートの小さな塔を倒さないように、静かにそっと遠巻きに集まります。
五つ目のハートに最初に挑んだのは佐々木さんの方でした。注意深く静かに、でもほんの少しだけ指先が震えたのが私には見えました。角と書かれたピンクの駒が、一番上の成香に微かに当たったのです。小さな塔はぐらっと揺れて、ハートがバラバラと将棋盤にこぼれました。
「ああ!」
と一斉に声が立ちます。
「あー、やっちゃった。負けたわ!」
佐々木さんの残念そうなセリフに、小野さんが返しました。
「勝負はまだ終わっちゃいねえ。俺がこいつを置いたら勝ちだ!」
「あーら、かっこいいことおっしゃる」
佐々木さんは悔し紛れにそんな風に言ったのでしょうけれど、本当にかっこよかったですよ、小野さん。見ているみんなもそう感じたと思います。そしてなんだか、佐々木さんも含めて全員が緊張して小野さんを見守っていました。
小野さんはやっぱり白の歩をとって、ハートの裏表や厚みの部分をじっくり眺めました。
「よく見えねえんだよなあ、こんな時に老眼鏡忘れてきちまった」
顔をしかめながら、ハートを近づけたり遠ざけたりしています。
「まあ、良いだろう。はい、これで勝ちですよ、と」
言葉は投げやりな感じでしたが、指先の動きは繊細で正確なものでした。5つ目の歩がまるでそこがもともとあるべき場所であったかのように、ピシリと収まったんです。
「おおおお!」「すごい」「やるなああ」歓声と拍手が起こります。
すると、その振動に影響されたのか、小さな白い塔は5つのハートがきちんと並んだ形のままで、パタンと将棋盤に倒れてしまいました。
「ああ、残念。誰か写真撮らなかったのかよ」
「そういうことすぐに思いつかないのよね。若い人ならとっくに撮ってるわよね」
「このあと撮るからさ、二人でもう一回やんなよ」
そう言われてましてもね、小野さんも佐々木さんも、なんだかぐったり座り込んでいてすぐにはもう一度という感じにはなれないようでしたよ。
「ちょと聞いて!今ね、ハート将棋についてた遊び方の本を見てたら、ハートアップゲームの5段重ねは[ミラクル]ですってよ」松下さんが言いました。
「ミラクルよ、ミラクル。奇跡ですってさ。大したもんだわね」
佐々木さんが小野さんに言いました。
「奇跡かあ、そりゃ、もう二度は起きねえなあ」
小野さんは笑いました。その場にいた皆さんも一斉に笑いましたよ。緊張が解けてなんだかむやみに嬉しい感じになってね。
「いや、もう一度起こるね。今度は俺がやる」って大山さんが言いだしたら、次々に自分も、私も、ってみんながハートを重ね始めたんです。私もやりましたよ。でもまあ、1個2個はできるんですけど、そこから先はね、やっぱり難しいんですよ。結局、そのあとは誰にも、佐々木さんにも小野さんにも5個積みの再現はできませんでした。
え、それでどうなったかって?いつも通り、いや、いつもよりは少し長い時間「ハート将棋の会」が続きましたけど、そのあとお茶の会になって。松下さんがみんなに「孫に報告しなくちゃいけないからね。ハート将棋どうでした?」
って聞いたら
「最初は変なもんだと思ったけど、こりゃあ、年寄りには良いね」とか
「将棋なんて自分が手にするとは思わなかったけど、ゲームが本当に楽しかった」
「これなら孫とできるんじゃないかと思う」とかね。なかなか好評でしたよ。
そんなわけでね、翌週木曜日の2時からは、「折り紙細工」と「お習字」と「編み物」と「ハート将棋」の会になったというわけなんですよ。もちろん、お茶とおしゃべりもついてますよ、それはもう。
あ、あのあとね、佐々木さんは小野さんに、本当には将棋を知らないっていうことを見抜かれてしまって。佐々木さん曰く、「嘘はついてないのよ、飛び将棋で最強だった、って言わなかっただけ」なんですって。小野さんに「ハート将棋なら動きが描いてあんだから、すぐできんだろ」って言われて、毎週、ハート将棋の会でお二人、本将棋戦やってらっしゃいますよ。
【ハート将棋物語】〜宇佐木野生(うさぎのぶ)作〜 *作家・宇佐木野生(うさぎのぶ)さんが「ハート将棋物語」を執筆しました。
実際に「ハート将棋」を購入されたお客様からお伺いしたお話をベースにした物語も含まれています。
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